昆虫綱膜翅(まくし)目スズメバチ科のアシナガバチ属の種類の総称。すべて狩りバチで、体長10~25ミリメートル。体は、黒、褐色、黄色の縞模様に彩られている。日本には数種産するが、平地の人家付近で普通にみかけられるのはフタモンアシナガバチと、セグロアシナガバチである。前者はよく屋根瓦の下の空間などに営巣し、人家の軒下に営巣するのは後者が多い。
冬を越した母バチは、4月ごろ単独で、直接日光や雨にあたらない、風当りの少ない場所を選んで巣をつくり始める。巣は六角柱状の部屋を並列して下に向けて束ねた巣板で、古い木材の繊維を集めて唾液で練ってつくられたものである。各室に1卵ずつ卵を産み、アオムシなどをかみつぶした食物を随時与えて育てる。初夏のころ最初の幼虫が成虫になるが、この新成虫は小形の卵巣が十分に発育していない雌で、働きバチとよばれる。働きバチが羽化し始めると、母バチは産卵と育仔に専念するようになるが、そのころから盛夏にかけて巣は急速に大きくなる。巣の中の個体間には順位があって、母バチはつねに最上位を占め、働きバチのなかでは、一般に早期出現者が上位を占めるといわれている。初秋には、雄バチと、翌年まで生き残る雌バチとが現れて、巣は解散する。交尾を終えた雄バチはまもなく死亡するが、雌は冬季もそれほど温度の下がらない場所を選んで越冬する。
アシナガバチは小回りの利いた動きや素早い飛行が苦手のため、単独で飛んでいるアシナガバチが人間を刺すことはほとんどありません。人間から手を出したり、誤って巣に近づいた場合に巣を守るために攻撃してくる場合があります。
アシナガバチはスズメバチなどに比べて巣の規模が小さく、開けた場所ならどこにでもつくっていく性質があります。巣は民家の壁・庭といった場所にもみられ、人間の生活圏につくられる場合も多く、また、その位置も人間の目線より低い位置につくられる例が多く見られます。そのため、家や庭にできた巣に気付かず、蜂が危険を感じる距離まで近づいてしまい、刺されてしまうというケースが毎年、多く発生しています。
スズメバチの1年に比べてアシナガバチは活動期間が短く、8月後半から9月には活動を一切しなくなります。巣に留まってじっとしているようになり、触っても刺したり、ほとんど攻撃してくることはありません。
アシナガバチは、自身の生まれた巣を非常によく記憶していて、冬眠を終えた新女王蜂がもとの巣に戻ってきたり、作っている最中の巣を失ったアシナガバチは同じ場所にもう一度巣を作る場合があります。そのため、駆除する場合、生き残りがいると、また同じ場所に巣を作り直します。
アシナガバチに刺されると、まずは強い痛みを生じます。蜂の毒には、外敵を追い払う目的があるため、強い痛みをもたらす成分が入っていると考えられています。そのため、刺されると強い痛みとともに、腫れも現れます。初めて刺された場合は、1日以内に症状が治まることが一般的です。しかし、2回目以降の場合は、蜂の毒によるアナフィラキシーなどのアレルギー反応が起こることがあります。アレルギー反応は個人差がありますが、ひどい場合は呼吸困難や意識消失ののち、死に至るケースもあるといわれています。
治療には、痛みや腫れを鎮める抗ヒスタミン剤やステロイド剤を用いることが多いとされています。その他、アレルギー反応が出ている場合など、個人の症状に合わせた治療が必要となります。