昆虫綱膜翅(まくし)目スズメバチ科に属する1種、およびスズメバチ亜科に属するハチの総称で、和名スズメバチは一名オオスズメバチ、大形種の俗称はクマンバチ。
和名スズメバチは、女王の体長40ミリメートルに達する世界最大のスズメバチで、体色は赤褐色に黒い横斑がある。日本全土の平地および低山地帯に分布し、別亜種は中国、インド、東南アジアに広くみられる。土中や大木の空洞に営巣し、巣はほぼ球形で直径40~60センチメートルに達し、5~10巣盤が縦に重ねられ、外側を粗い板状の外被が覆っている。各巣盤は多数の棒状の支柱によって連結され、強化されている。巣は春にただ1頭の女王バチによって創設されるが、その子である働きバチの羽化とともに急速に発達し、晩秋になって数百頭の新女王バチと、ほぼ同数の雄バチを産出する。新女王バチは交尾後に土中などで単独で越冬するが、働きバチと雄バチは越冬することなく年内に死に絶える。巣は1年限りで廃巣となり、再利用することはない。典型的な肉食性の狩り蜂で、カマキリ、スズメガの幼虫、大形のコガネムシなどを狩って幼虫に与える。とくに秋の新女王バチの生産期には多量のタンパク質を必要とするため、働きバチの集団が他種のスズメバチやミツバチの巣を襲い、数時間の死闘ののち相手側の成虫を全滅させ、巣内の幼虫やサナギをすべて自分の巣へ運んで食物とする。したがって、日本や東南アジアにおけるミツバチ飼養上の最大の害敵として養蜂家に恐れられている。
最も巣が大きくなるのは9~10月頃。スズメバチは何度も刺すことができ、特に働きバチは攻撃的で、巣へ近寄ったり、巣に振動を与えると、大顎をかみ合わせてカチカチと威嚇音を発し、尾端の毒針で何度も相手を刺します。
スズメバチの毒はハチのなかで最も強力で、主成分のキニン類は痛みとともに血圧低下を引き起こすが、ほかにヒスタミン、アセチルコリン、数種のタンパク質分解酵素などを含む。刺された場合、通常の体質の人は、激しい痛みと腫れを伴う一過性の毒作用で済むが、ハチ毒に対して過敏症の人では、手や足などを1か所刺されただけでも、アナフィラキシーショックによるアレルギー反応で吐き気、悪寒、発熱、じんま疹などの全身症状とともに、呼吸困難などで重体に陥り、死に至ることもあり、日本では年平均30~40人余の死者が出ています。
ハチは黒いものを攻撃する傾向があるので、白い服装や帽子を身に付けることを心がけます。
ハチの巣を見つけたら近付かないようにし、もしハチに刺されたら、巣から一刻も早く遠ざかり、毒を絞り出しながら傷口を流水で洗い、患部を冷やします。スズメバチの場合は、速やかに病院で治療を受け、ミツバチやアシナガバチでも、体にじんましん等の異変があれば病院で治療を受けてください。ハチに1度刺されたことがある場合は、アレルギー反応(アナフィラキシーショック)でショック死することもあるため、速やかに病院で治療を受けてください。
毒力は大形種ほど強いが、キイロスズメバチは近年、都市近郊の新興住宅地に多発し、体は小さいが集団で攻撃するため注意が必要です。